2020-6-15

あんしん先生blog3 【誤嚥性肺炎】

緊急事態宣言が解除されましたね。ただ油断は禁物です。

私の勤める病院では第2波のクラスターを警戒して

COVID-19(新型コロナウィルス)対策に力を入れています。

院内でのマスク着用義務、エレベーター内の人数制限、そして飲み会等は依然禁止です。以前のような日常生活に戻るには相当時間がかかると思いますが、粘り強く頑張りましょう!

さて、いきなりですが誤嚥性肺炎について問題です。次の3つの中で、どれが一番誤嚥しやすいと思いますか?

a.水 b.とろみ水 c.お粥

正解はa.水です。

実は液体の水の方が、まとまって飲み込むことが難しく、誤嚥リスクがとても高いのです。嚥下機能が落ちた場合、とろみをつけるなどの食形態調整や接触嚥下訓練、口腔ケアによって誤嚥リスクを下げる工夫をしましょう。

2018年の日本の死因は1位:悪性腫瘍、2位:心疾患、3位:老衰、4位:脳血管疾患、5位:肺炎、6位:不慮の事故、7位:誤嚥性肺炎と続きます。以前は肺炎の中に誤嚥性肺炎を含めていたため、肺炎で亡くなる方が全体の3位でしたが、近年、誤嚥性肺炎で亡くなる方が多いことと、一般的な肺炎と区別する形で誤嚥性肺炎として独立してカウントされるようになったようです。

高齢になると嚥下機能に障害が出ることが多くなります。また、唾液や痰などの口腔内分泌物を自分で排出することが出来ず、それらが口から咽頭にかけて溜まりやすくなります。その唾液や痰が間違って食道(胃につながる)ではなく気管(肺につながる)に入ると肺に詰まり、そこから菌による炎症症状を起こします。これがいわゆる誤嚥性肺炎の原因となります。人間の気管は右肺につながる右気管支と左肺につながる左気管支とに分かれます。解剖学的に右気管支は左気管支よりも太くて垂直方向に近い構造をしている(分岐角度が低い)ため、右の気管支の方が誤嚥しやすくなります。したがって、誤嚥性肺炎は右の肺に起こりやすいのです。誤嚥リスクのある高齢者の介護においてはST(言語聴覚士)さんの指導や食事介助、口腔ケアを行い、少しずつ時間をかけて食べることが大事です。また、食後すぐ横になるという行為も誤嚥のリスクを高めますので、食物を細く刻むまたはとろみをつけて食べやすくしたり、食後や日中はベッドの頭の位置を高くするよう心がけましょう。私が勤務する病院でも誤嚥リスクを避けるため、ベットのヘッドアップを促し、約30°の高さにするよう調整しています。

嚥下機能は食事を体内に入れるとても大事な機能です。ヨーロッパでは食事が自分でできなくなった時が自分の寿命と考え、胃瘻や経鼻経管栄養などの延命処置を望まないという考えが浸透しています。ある意味とても合理的な考え方かもしれません。

自分で食事を口から摂れることこそ生きる証であり、何よりも幸せなことなのですね。

仕事柄、数分以内で食事を終わらせる機会が多いため、ついつい早食いになってしまうのですが、時間をかけて少量ずつゆっくり噛んで味わって食べる習慣を今からでも身につけたいものです。

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