「くすりはリスク?」-しろヒゲ先生の医療談話(by Dr. Hiroshige)

 きょうは、「おくすり」と「高血圧」について、お話しをします。

 「くすり」を逆さから読むと「リスク」と読めます。たしかに、どんなお薬にも、副作用のリスクがありますので、服薬の際には、きちんとリスクを評価して、リスクよりもお薬を飲むメリットが大きい場合に、医師がお薬を処方します。しかし、患者さんのなかには、「高血圧や糖尿病は、一度、薬を飲み始めたら、やめられなくなるっていうから飲みたくない。」と、おっしゃるかたがいます。
今日は、そんな、服薬をためらう、高血圧のある患者さんと、服薬治療をしたほうが良いと考える医師のやりとりをご紹介します。

(以下、会話のやりとり)

医師 「そろそろ、血圧を下げるお薬を飲み始めませんか?」

患者さん 「血圧が高いのはわかっていますが、一度飲み始めたら、やめられなくなるって、友達も言ってますし。。。」

医師 「お薬に対して、不安を感じていらっしゃるのですね。お気持ちは良くわかります。では、人生を、いろんな道をわたる旅に例えるなら、“信号のない車道”を横断するのと、“信号のある横断歩道”をわたるのと、どちらが、車にひかれずより安全に旅を続けることができるでしょう?」

患者さん 「いきなり“人生と道路”の話ですか(^^;)。それは、無防備に“信号のない車道”を渡るのは危険ですよね。でも、信号があって横断歩道をきちんと渡っていても、運が悪ければ、車が突っ込んできて事故に遭います。」

医師 「おっしゃる通りです (^^)。ご病気とお薬の関係も、それに似ていて、毎日の生活という人生に、ご病気があっても、“無防備に、何もしない状態で日々の生活を送る”か、“お薬を飲んで病気のリスクを減らして生活する”か、どちらが良いですか、ということです。もちろん、お薬を飲むと副作用というリスクは多少、ありますが、お薬を飲まないリスクのほうが、ずいぶん大きいと思いませんか?」

患者さん 「はぁ。まぁ、それはそうですけど。。。でも、血圧が高くても、どこも痛くないし、別に具合悪くないんですけど。。。」

医師 「そうですね。おっしゃる通り、血圧が高くても、痛みはないですね。でも、血圧が高いままにしておくと、当分の間は自覚症状はありませんが、ある日、突然、心筋梗塞や脳出血を起こしてしまうことがあります。」

患者さん 「“ことがある”ということは、“起こらないかも知れない”わけですよね?」

医師 「そうです。起こらないと良いですね(^^)。車道を横切るのに、横断歩道も信号もないところを毎日、ガードレールをまたいで横断していても、一生、事故に遭わない、幸運なひともいるでしょう。横断歩道を、信号を守って渡っていても、事故に遭ってしまう不運なひともいるかも知れません。人生ですので、“絶対に安全”というような“絶対”は考えにくいですが、リスクの少ない選択をしたひとが、長い人生を、長期間、より安全に過ごせる可能性が高いと思います。“お薬を飲む”ということは、“リスクを減らす”ということです。」

患者さん 「わかりました。しばらく、よく考えさせてください。ところで、お薬以外に、方法はないんですか?。ダイエットとか塩分ですか?」

医師 「その通りです。食事や運動、体重のコントロールは、血圧を適切に保つのに重要な要素です。高血圧には、いろいろなタイプがあることが知られていて、食塩感受性(ナトリウム依存性)高血圧と、食塩非感受性(ナトリウム非依存性)高血圧というものがあります。」

患者さん 「え? 塩分依存性?。」

医師 「はい。その患者さんの高血圧は、塩分が原因なのか、塩分は関係ないのか、ということです。つまり、塩分をとり過ぎると血圧が上がってしまう人は、塩分をひかえれば、血圧は下がります。でも、塩分をとらなくても、塩分に関係なく血圧が高くなってしまうひとは、お薬で血圧を下げる以外に、今の医学では、それに替わる良い方法は、残念ながらまだない、ということです。食塩非感受性(ナトリウム非依存性)であったら、塩分は高血圧と関係ないので、塩分をいくらとっても良い、というわけではありませんから、誤解のないように。過剰な塩分摂取は、胃がんのリスクとも考えられています。」

患者さん 「わかりました。次回、受診したときまでに、お薬を始めるか、決心してきます。」

 この患者さんは、よくご理解いただいたようで、後日、服薬治療を開始しました。そして、血圧が順調に下がってきて、今も服薬を継続なさっています。

 昭和初期、日本人の平均寿命は約50歳でした。それが今、男性は約80歳、女性は約86歳と、30歳以上、寿命が延びています。昔は血圧が高くても、自覚症状がないため放置して、ある日、突然、心筋梗塞や脳卒中(昔は脳血管疾患のことを、まとめて脳卒中といいました)で倒れていたのです。それが今は、血圧を誰でも簡単に測れるようになり、自覚症状のない高血圧がわかるようになりました。そして、治療のために、きちんとお薬を飲んでいるので、昔より、はるかに長生きできるようになったのです。もちろん、お薬以外にも、生活環境や衛生状態が改善し、医療・介護が全般的に進歩したことが、長寿命化の要因であることは、いうまでもありません。

 “薬のリスク”と、“薬を飲まずに放置した場合のリスク”をよく知っていただき、快適で健康な生活に、今日のお話しを役立ていただければ幸いです。

しろヒゲ先生のポイント・アドバイス

  • お薬について、疑問や不安が少しでもあれば、そのお薬を処方した医師や、担当薬剤師に遠慮無くご質問ください。特にご質問がないと、「わかっていただいたんだな」と、私たち医療スタッフは思ってしまうことが多いのです。ですから、医療・介護を利用するみなさまは、どうぞご遠慮なく、どんなことでも、スタッフに質問してください。

 

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