「手はくちほどに?」-しろヒゲ先生の医療談話(by Dr. Hiroshige)

 きょうは、「手」についてお話しをします。

 「関節リウマチ」という病気の名前を聞いたことがあるかたは多いと思います。関節リウマチは、女性に多くみられるご病気で、手の指の関節が、小指側に曲がってきてしまう症状が特徴的です。以前は「慢性関節リウマチ」と呼んでいたのですが、2002年に日本リウマチ学会というリウマチの専門医師の集まりで、「慢性のものばかりではないので、これからは『慢性関節リウマチ』とは呼ばず、『関節リウマチ』と呼ぶことにしましょう。」と決まったため、今は正式名称を「関節リウマチ」といいます。

 この関節リウマチは、冒頭にも申し上げたように、手の指が曲がってきてしまうのですが、その他の症状として「朝に手がこわばる」、「関節が曲がりにくくなる」といったものがあります。こんな話をすると、多くの女性が「あらっ。私も二十歳(ハタチ)の頃と比べて、指が曲がってきたわ。関節は節くれだってきたし。。。」とご心配になるかもしれません。でも、心配する前に、手のひらを地面側に向けて、じゃんけんの「パー」になるようにしてみてください。ご自分の手の甲が見えますよね。手の指のツメにいちばん近いところの指の関節を、医学用語では「DIP関節(遠位指節間関節)」といいます。DIP関節よりも一つ、指の付け根側にある関節を「PIP関節(近位指節間関節)」といいます。そして、指の付け根の部分の関節を「MP関節(中手指節関節)」といいます。

指の関節の名称(写真:指の関節の名称)

 よく、子どもさんが、「第一関節」などと表現していますが、正しくは「DIP(ディー・アイ・ピー)関節」等といいます。このDIP関節が、節くれだってきて、痛みもあったら、それは関節リウマチではありません。ご安心ください。

 日本人の多くの女性に、このような指の変形がみられるのですが、これを医学用語では、「ヘバーデン結節(発音によっては、ヘベルデン(Heberden)結節」といいます。ヘバーデン結節は、厳密な原因はよくわかっていないのですが、男性より女性に10倍多くみられ、特に手をよく使う「はたらきもの」の女性にみられます。

 病院の外来で、中年以降の女性患者さんから「わたし、昔にくらべて、指がなんだか横に曲がって、しかも痛いんですけど、リウマチではないかと心配なんです。」というご相談を受けることがあります。そんな時、手を注意深く観察させてもらいますが、関節リウマチによる手指の変形ではなく、ヘバーデン結節にともなう指の変形であることがよくあります。わたしは、そんな手をみると、「これは、よく働いた人にできる勲章みたいなものですよ。ご家族から、感謝状をもらわないとね。」と思わず言ってしまいます。

 ところで、映画「風と共に去りぬ」という映画をご覧になったかたは多いと思いますが、あるシーンが、わたしにはとても印象的でした。それは、主人公の美しい女性スカーレット・オハラが、実はとても苦労して暮らしているのに、優雅な生活をしていると見栄を張ったシーンです。洞察力のするどい男性レット・バトラーは、スカーレットの手をみて、瞬時に、彼女の見栄によるウソを見破ってしまったのです。

 もし、レット・バトラーに医学の知識があれば、「節くれだった手」といわずに「はたらきものの手」と言って、彼女を賞賛したのではと勝手に想像しています。このように、手をみると、その人の生活がすこしだけ見えてきます。。

 一方で、手には不思議な力があるようにも思えます。「小さなお子さんの背中をさするお母さんの手」、「ベッドで療養している患者さんと、お見舞いに来たお孫さんとの握手」。手から伝わるそのひとの気持ちは、きっと言葉では表現できないものなのでしょう。

 私たち、医療・介護にたずさわる者にとって、仕事上「手」はとても大切な「手段」ですが、一方で患者さんの「手」は、そのかたご自身の人生が刻まれた、その人の人生をあらわす「手段」でもあると思います。

 医師による診察の時、患者さんの手から得られる情報は、温度に左右差がないか、むくんでいないか、握力は利き手のほうが少し強いか、左右の手首の脈拍の強さに違いはないか等、いくつかの医学的所見を得ることができますが、みなさんも是非、手にも気を配ってみてください。もしも、片手だけ冷たかったり、急に片側の手の握力が低下してきたら、それは、なにか病気のサインかも知れません。そういう時は、ためらわずに医師にご相談ください。結果的に病気でなかったとしても、きちんと診ておけば、安心して患者さん・介護サービス利用者さんは暮らすことができます。

 「目は口ほどにものを言う」といいますが、「手もほどほどにものを言う」と覚えておいていただければ幸いです。

しろヒゲ先生のポイント・アドバイス

  • 急に、かたほうの手の握力が低下してきた場合、脳梗塞や、慢性硬膜下血腫、等、高齢者に時々みられるご病気の前兆である場合があります。このような症状をみとめた場合には、一度、医師に診察してもらいましょう。

 

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