「おおきな災害に遭ったら」-しろヒゲ先生の医療談話(by Dr. Hiroshige)

 このたびの東日本大震災により被害を受けられた皆さま、およびご家族の方々に謹んでお見舞い申し上げます。一日も早い復興と皆さまのご健康を心からお祈り申し上げます。

 きょうは、大きな災害に遭遇して被災してしまったときのことをお話しします。

 3月11日に起こった東日本大震災では、大変多くのかたが被災されました。私は医師として災害発生直後から現地へ行き、医療活動にあたってきました。
現地の様子は、みなさんテレビでご覧のとおり、とても言葉では言い表せない悲惨な光景でした。
流された家屋、えぐられた路面のアスファルト、グニャグニャに曲がった鉄骨のガレキ、そしてテレビでは感じることが難しいと思いますが、鼻で感じる独特の空気、また、風が吹けばホコリが舞い上がって、目を開けていることができないくらいでした。
行方不明になられたご家族を捜す人、ガレキの撤去を始めた自衛隊、そして、時として発見される犠牲者の亡骸。私は医師として何ができるのか、一瞬その場で頭の中が真っ白になって立ちつくしてしまいました。

 最近は、5月の連休も明けて復興の兆しが見えてきましたが、地震・津波の直後、被災者の皆さまは避難所で大変な日々を過ごされていました。そのなかにはご高齢のかたもいらっしゃいました。ご高齢であるだけでなく、持病もあり、定期的に診療所へ通っていたそうですが、地震があった直後に、お薬を持って逃げる余裕はありません。
避難所生活は、普通に考えても大変なだけでなく、お薬もなく、十分な医療を受けられる体制も整っていません。
医療スタッフが、体調をくずしたご高齢の被災者に、「ここでは十分な医療を提供できないから、地震の被害がほとんどないところへ移動して、しばらく療養しませんか?」と提案しても、「家族が心配だからここに居たい」、「家が心配だからここに居たい」、「自分が生活してきたこの町から離れたくない」という答えを多く聞きました。

残念なことに、家は津波で流されてしまっているのです。
いまだ発見されず行方不明になっているご家族を心配するお気持ちはわかりますが、お互い口には出さないけれど、心の中で思っている『もしも』のことを思うと、こちらが泣いてしまいそうで、次につなぐ言葉が見つかりませんでした。

 このような場合、どうしたら良いのでしょう?被災地に物資は続々と集まってきますが、医療や介護を円滑に提供する体制を、避難所で確立するのはとても難しいことですし、時間もかかります。大事なことは、『持病があったり、介護が必要な状態で、もし大災害に遭ったら、陸路(道路)が復旧した時点で、被災地の中心からいったん出て、被害のない安全な地域でしばらく過ごす』ということです。
せっかく地震や津波から逃れて、助かったと思ったのに避難所で持病が悪化して病死してしまう、という患者さんの話を聞くと、、本当に残念でなりません。こうした状況は何としても避けたいのです。

行方不明になったご家族を心配するお気持ちもわかります。家が心配なこともわかります。
一時的にであっても故郷を離れることをためらうお気持ちもわかります。
でも、だからこそお元気な状態でまたみなさんと再会できるよう、被災地の真ん中で頑張らずに、早めに医療体制の整っている地域へ一時避難されることを強くおすすめします。

 被災された当事者の皆さまのお気持ちをすべて理解することは難しいですが、今回、一人の医師として東日本大震災の被災地に行って感じたことを述べさせていただきました。日本は地震の多い国です。
このコラムを読んでいただいたかたが、将来、もしも地震に遭遇してしまった時どうするのか、答えは一つではありませんが、ご参考になれば幸いです。

※ 被災地から他の市区町村に避難した場合、住民票の異動を行わなくても、避難所あるいはご家族のお宅などで、ホームヘルプなどの介護サービス利用ができます。
また、被保険者証をなくした、ご自宅にあるが取りに戻れないなどにより、お手元に被保険者証がない場合でも、氏名・住所・生年月日を介護事業者にお伝えいただけば、介護サービスが利用できます。

 

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