社内研修 認知症とアルツハイマー

日 時:2010年11月12日(金)18:30〜20:00
会 場:当社研修室
参加者:看護師・ケアマネージャー・介護福祉士 他 20名
講 師:医師 山下朱生(あけみ)先生 [医療法人社団 順江会
総合病院  江東病院 泌尿器科部長]
テーマ:『認知症とアルツハイマー病について』

認知症とは(認知症の定義)

以前の知的機能レベルから低下し、知的行動に限らず日常習慣的なことが 広く障害された状態

認知症有病率

日本の高齢者での有病率は3.0〜8.8% (65歳以上)
(調査によってばらつきが大きい)
2026年には10%に上昇するとの推計もある

認知症年間発症率

65歳以上で1〜2%
年間発症率は75歳を超えると急に上昇
65〜69歳では1%以下
80〜84歳では8%に上昇

認知症の分類

  1. 血管性
  2. 変性性
  3. 感染性
  4. 治療可能性

1. 血管性認知症

  • 多発梗塞性広範囲虚血型(ビンスワンガ-型白質脳症を含む)
  • 多発脳梗塞型
  • 限局性脳梗塞型
  • 遺伝性血管性認知症

  

2. 変性性認知症

  • アルツハイマー型認知症
  • パーキンソン病
  • 前頭側頭型認知症
  • ピック病
  • びまん性レビー小体型認知症
  • 進行性核上性麻痺

3. 感染症

  • クロイツフェルト・ヤコブ病
  • HIV関連性認知症

4. 治療可能な認知症(treatable dementia)

  • 慢性硬膜下血腫-血腫除去
  • 正常圧水頭症-V-Pシャント
  • 甲状腺機能低下症-薬

中でも多くを占める

脳血管性とアルツハイマー病の違い

脳血管性認知症

脳血管障害と関連する認知で再発を繰り返す多発性ラクナ梗塞に高度な白質障害を伴う

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知)

海馬から側頭ー頭頂ー後頭葉連合野の神経細胞脱落をきたす変性疾患

脳血管性認知の特徴

早期より実行機能障害が目立つ、階段状進行か不変
うつ状態、やる気低下がアルツハイマー病より高率
パーキンソン二ズムや仮性球麻痺、尿失禁などを伴いやすい
脳卒中後にADLは保たれているのに初期からやる気低下、うつ状態が高率、高度な物忘れが少ない

アルツハイマー型認知の特徴

  • 早期から記憶障害が目立つ=高度の物忘れ
  • 穏かな発症と進行性の認知機能低下
  • 持続的に進行
  • 病識がない(周りから見て明らかなのに本人は気にしない)
  • 作話で話のつじつまを合わせようとする
  • 変に調子がよい(多幸的)

薬物療法

アリセプトが第1選択薬、服薬開始後12週より効果発現
焦燥、攻撃性:ハロペリドール、オランザピン、4週で奏効しなけれ中止
妄想や攻撃性:リスペリドン、睡眠覚醒リズムの障害(昼夜の逆転)に有用
せん妄:チアプリド、リスペリドン。
うつ病を合併:SSRIやトラゾドン
睡眠障害:ベンゾジアゼピン系薬物は可能な限り短期間はトリアゾラム副作用として健忘

非薬物療法

行動療法:排尿を上手く促すことにより尿失禁の回数減少
食事、着脱衣の指導
心理、精神療法、回想療法、確認療法(バリデーション)
患者の自尊心の保持、ストレスの減少、残存能力の活用
デイ、ケアなどでのグループ活動、ゲーム、手芸、絵画、音楽などへの参加

バリデーション
認知症の方とのコミュニケーションを行うためのセラピーの1つで、相手に尊敬と共感を持って関わる実用的な手法

バリデーションの理論と実践

    1. つらい悲しみの気持ちは、信頼できる聞き手によって認められ、バリデーションされることによって癒されていきます。
    2. つらい苦しみの気持ちはそれを無視されたり禁止されたりすると強くなります。そして深く傷つきます。
    3. 若い頃に深く心に刻まれた記憶は年をとってもよく保たれています。
    4. お年寄り達は、最近の記憶をなくしてくると、過去の記憶の中から色々な事柄を手繰り出してきて、それがあたかも今起きているかのように行動します。
    5. もし目が見えにくくなった時は心の目を使って見続けようとします。

もし耳が聞こえなくなった時は、過去の音を今の音の代わりに聞くのです。

  • 人間は1人ずつそれぞれ個別の気付き(自覚)を築きます。
  • 時々お年寄りは今の現実がとても苦しいものになると昔の記憶の中に逃げこんだり、励まされたりして生き延びようとします。
  • 今現在の感動的な心の触れ合いは、過去の同じような感動を蘇えらせる引き金となります。

 

認知症の人に対応するときの原則

認知症の人のペースを考える

受容と理解のある態度
全てがうまくいっていることを話し、安心させる
良い点を認める
間違いであっても受け入れ、怒らない
納得できるように話す
非言語的なコミュニケーション-手を軽くなでる、背中をさするなど一人で放置しない
良い刺激を与え、廃用症候群の予防
人として接する

1. 記憶障害への対応

刺激のある生活を工夫
記憶しておくことへの工夫
大きなカレンダーを目に触れるところに貼る
日にち曜日など確認
予定の書き込み(一緒に確認)
季節感のある話題の会話
記憶ノート

2. 固執への対応

忍耐をもって接する

3. 見当識障害による不安への対応

受容と共感的態度
受容している表現→相づちを打つ、頷く
言葉を繰り返しながら本人の話しを聴く
感情を正確に把握して、言葉で返す
怒ったり、叱責したりしない
穏やかだが、刺激のある生活を支援
楽しく、人と接するような環境、役割の環境心地よい生活空間を工夫

4. 幻覚・妄想への対応

  • 置き忘れを「なくした」でなく、「盗られた」と表現
  • 嫉妬妄想:妻の不貞を信じ、攻撃
  • いじめられ妄想:「嫁にご飯も食べさせてもらえない」→孤独感から生じる
  • 本人が見えているもの、感じているものを把握、あまり細かく質問しすぎない
  • 否定→ 妄想を増強
  • 受容的態度で黙って聞く、肯定も否定もしない
  • 無くした物が見つからないと不安がるようなら、「一緒に探しましょう」と対応
  • 本人に見つけてもらうように普段から保管、誘導

5. 徘徊への対応

徘徊:道や場所がわからない、迷子
転居、入院、見当識障害、不安
せん妄、ぼんやり
脳気質障害、早足、硬い表情、人を押しのける
生き生きしていた頃に戻りたい

対応:不安を減らすこと
今いる場所がわかるように表示
廊下や部屋を明るくする
運動、散歩、興味を引くものに注意を向ける
楽しみや仕事を提供
外に出て気分をほぐす

6. 不潔行為

便・尿など排泄物をもてあそんだり、まき散らす。
身体拘束は禁物! 原因、対処

  • 蒸れる、暑い、かゆい
    →おむつをはずし、言葉や行動、サインで尿意を把握、誘導
  • 残便・残尿による不快感、手で便を取り出す
    →水分摂取を増加、腹部マッサージや温湿布で排便を促す
  • 排便後の後始末ができない
    →居室、トイレでの様子や臭気を早期に把握
    見える所にトイレットペーパーを置く
    本人の処理しようとした行為を認める
  • トイレまで間に合わない
    →排尿・便のリズム、トイレ誘導、ポータブルトイレ
  • 汚れた衣類をタンスや押入れに入れる
    →羞恥心やプライド:怒らず、本人がいないときに処理
  • 誤認や空間失認(ごみ箱に放尿)
    →ポータブルトイレ、「便所」と書く

7. 攻撃的言動(感情のコントロールがうまくいかない)

一度怒り出すとひどい言葉で非難し暴力をふるう要因あり=状況判断や理解ができず怒る
→少しの間、冷静に様子を観察、しばらくすると何に腹を立てていたのか忘れ、元の状態に戻ることがある

無理矢理何かをしようとしたり、手をはね除けたり、大声で怒なりだす
→何かをする前には、必ず声をかける

参加者の感想

  • 専門分野以外とおっしゃられながら大変わかりやすいお講義、誠に有難う御座いました。パーキンソン症候群の患者ですが、日内変動がある為、服薬管理の指導を行っていますが、老々介護のうえ各々ライフスタイルがあり、なかなか理解が出来ません。山下先生に確認できて大変気持ちが楽になりました。認知症の方も同じですが、介護する側の背景を考えるとあまり強くも指導出来ないのが現状です。今後も多様なケースにぶつかると思いますが、本人や介護者の訴えに耳を傾け、適切な指導を行っていきたいと思います。
    また、バルンのキャップについては貴重な朗報有難う御座います。ご利用者様にお話ししたところ是非、使用してみたいとの事でした。新しい情報を教えて頂き感謝しております。
  • 介護の現場において、切っても切り離すことのできない疾患であるアルツハイマーと認知症について、病態生理や症状・治療法などを再度学ぶことができ、より理解が深まりました。認知症には多くの種類があり原因や症状も様々です。「認知症」とひとくくりに考えず一人一人に合った治療や対応が非常に重要であることを改めて認識することができました。治療法は年々発達しており、最新の治療について知っておくことの重要性を痛感しました。今回の研修で得た学びを今後の現場へ生かし、ご利用者様やご家族の負担緩和に努めていきたいと思います。
  • 認知症は大きく4つに分類され、その中には外科的治療により治癒するものもあると先日観たテレビ放送でも言っていましたが、他に内服治療の可能性のある病名などについても具体的に知る事ができました。また、アルツハイマー型は薬物による対症療法が有効とされていますが、私達介護者が認知症の人と係わる時にどの様に接したら良いのか、具体的な話をお聞きすることができて大変参考になりました。
  • 以前、ケアの際「虫がいるから」と言われ存在しない虫をいつまでも払いつづけたことがありましたが、ご利用者様はその後はすっかり落ち着かれました。粘り強く対応していくことで症状が良くなる、あるいは悪化を遅らせるということを実感しています。受容と共感、そして忍耐をもってていねいに対応していきたいと思います。
  • 薬物療法は副作用もあるためバランスのとり方が難しく、本人の為というより家族の為に使用する意味合いが強いと伺い、非薬物療法の重要性を改めて感じました。バリデーション等 認知症の方とのコミュニケーションのとり方をしっかり学んで、ご家族のご苦労を少しでも軽減できるよう努力していきたいと思いました。
  • 認知症の事は、詳しい知識は全くありませんでしたので、血管性・変性性など種類があり、それによって症状が異なる等 知る事が出来とても勉強になりました。高齢化が更に進み、自分の親や身近な人がその様な病気になった時、又は、これから私が担当させて頂くご利用者様でその様な症状になられた時などに大変役に立つ内容で興味深く学ばせて頂きました。今後もご利用者様のケアに入った時に、実践出来る内容の研修会を楽しみにしています。

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